布石を打てば、より良い偶然が引き寄せられる

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川良:ミモレ読者のオンラインコミュニティ、〔ミモレ編集室〕まさに横の学びです。書くことなどによる表現を磨きたい人が集まる〔ミモレ編集室〕では、講談社の新刊のブックレビューなどの課題に挑戦したり、メンバーのみなさん主導でさまざまなオンラインイベントを開催したりと、活発な活動がなされています。

共感し、認め合うほか、いろいろな考えの方がいるので、時には「なんだか違うな」「モヤモヤする」といったこともあるでしょう。でもそれが、自分の感情や思考を俯瞰で見る機会にもなると思っています。挑戦している人、課題に直面している人を見て刺激にもなっているのではないでしょうか。

 

〔ミモレ編集室〕での出会いは偶然の出会いです。また、私は以前先生がおっしゃっていた「よりよい偶然を引き寄せるためには“布石を打つ”ことが大切」という言葉がとても好きなのですが、〔ミモレ編集室〕は“布石”にもなりえるのではないかと思っています。
 

 


大きなチェンジは、小さなチャレンジから

——私もそう思います。私にとって〔ミモレ編集室〕は布石でした。先生、この「布石」について、改めて読者の方にアドバイスをお願いします。

高橋:以前のインタビューで、「個人のキャリア形成において、最大で約8割が偶然の出来事に左右されている」という「計画的偶発性理論」についてお話しましたが、何をしてもムダということではありません。この理論を提唱したジョン・D・クランボルツ教授は、「より良い偶然がたくさん起きている人とそうでない人がいて、その違いは普段の行いにある」とも述べています。

 

良い偶然や出会いに恵まれるために大切なのが、越境学習や、“布石を打つ”ことです。なんとなく惹かれるもの・興味のあるものを大切に、仕事やキャリアアップに直接関係ない人脈に投資したり、学んだりしましょう。こうしたことを、私は“布石を打つ”と表現しています。あとでどう活きるか予想せず直感に従い置いた石が思わぬところで効き、チャンスが巡ってくるのです。

川良:自分の内的動機を知り、越境学習で横の糸、水平の学びを重ね、“布石”を打ってよりよい偶然を引き寄せる……。こう聞くと大きなチャレンジ、勇気がいることのようですが、前回の記事で先生がおっしゃっていたように、“大きなチェンジは、小さなチャレンジから”で良いのですよね。ミモレではこれからも、ミドルエイジ女性の「小さな一歩」を後押ししていきたいと思います。


対談前編
「無計画」「非効率」を受け容れるほどうまくいく? 変化多き時代の「私らしいキャリア」の築き方【高橋俊介×川良咲子】>>
 


撮影/小野さやか
取材・文/吉澤 穂波
構成/金澤英恵